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2013年3月15日金曜日

文章の構造 (英語リーディングの科学 2章メモより)


 

浦島太郎の物語は「浦島太郎はおじいさんになりましたとさ、めでたしめでたし」と要約できるのか。この要約?に違和感を覚えるのは、物語の文構造を無視しているためだと思われる。以下では卯城裕司「英語リーディングの科学2章 英語の構造 の内容をメモしたものをブログ用に改変し紹介する。

 この章で触れられている「英語の構造」は文法などの細かなものを指さず、文章全体を構成する段落構成等として説明されている。
 これら文章の構造を知り、上手に活用できるようになれば、学習者の理解度は高まる。これらは、情報が学習者の頭の中で効率よく整理されるからである。しかしながら、すべての学習者が第二言語で書かれた文章の構造に気づくのは非常に困難である。これはテキスト構造と学習者の両者は多様で複雑であることを示しているのかもしれない。

 文章の構造は、物語と説明文で構造の分類が大きく異なる。以下ではこれら2つを簡単に紹介する。

物語の場合
 物語の文体に関する研究は数多く行われている。全ての理論が例外なく適応されるわけでは無いが、この本で紹介されているものを1つ挙げる。

 物語の文章の構造は大きく4つのカテゴリーに分類される(Thorndyke(1977))。それらは「設定」「テーマ」「プロット」「解決」であり、これらにより物語は成り立っている。

「設定」 … 登場人物、場所、時間に関する記述
              (むかしむかし、おじいさんとおばあさんは川のほとりで過ごしていたetc.)

「テーマ」 … (出来事 +) 目標
              (桃太郎は鬼退治をしなくてはならないetc.)

「プロット」 … 目標に至るまでのさまざまなエピソード
              (桃太郎はサル、イヌ、キジを仲間にするetc.)

「解決」 … テーマの結末
              (無事、鬼を退治した桃太郎は宝を村民に返しましたとさ、めでたしめでたしetc.)

また、物語の読者が重要とみなす情報に関しての研究も紹介されている。Horiba(1993)では「因果ネットワーク分析(causal network analysis)」から、因果関係の連鎖の数が多ければ多いほど、読み手は重要と感じることがわかった。


説明文の場合
 説明文の修辞構造では、代表的な4つの修辞構造パターンがしばしば見られる(Carrell(1984))。それらは「記述の集合」「因果関係」「問題/解決」「対比」である。この説明文の構造に気づいた学習者は、後により多くの内容を思い出すことができることがわかっている。

「記述の集合」 … Topicに関して、それに関連することを羅列したもの
              (鎌倉幕府に関して、1代目は源頼朝、2代目は源頼家、3台目は源実朝であるetc.)

「因果関係」 … Topicに関して、原因と結果が述べられているもの
              (アリは道標となる匂いを道に残すために、列をなし、効率的に餌を運べるetc.)

「問題/解決」 … Topicに関して、問題とその解決策を挙げているもの
              (環境汚染はという点で問題であり、解決策としてが挙げられるetc.)

「対比」 … Topicに対して、複数の観点から、見解や主張が述べられているもの
              (喫煙に関して、肺癌のリスクを高めるという声があれば、納税に貢献しているという声もあるetc.)


このようなことが本では詳しく紹介されていた。上記では主に研究の紹介を行ったが、これが教育での実践・応用の話となると、どうだろうか。
生徒(学習者)が文構造に関する理解によるメリットとして、学習者が文章の構造に気づいてリーディングを行うことが出来れば、記憶の再現率は高いことが見られたようだ。この観点を教えることで、文章読解に関して、より高度な理解が期待されるだろう。
ただ、生徒に文構造を教えることが確実に有益であるかどうかは疑問である。その理由は2点である。1点目に、この記事の冒頭で触れたとおり、文章の構造は多様であり、全てが当てはまるわけではない可能性が挙げられる。例え教材として使われている文章の構成で練習し、理解できるようになったとしても、今後読む文章の全てがこれらの例に当てはめられるとは限らない。2点目に、現在の教科書で扱われている文章は少ないために、文構造の理解の練習が十分に行えないばかりか、上記の例を網羅できない可能性を挙げる。学習者個人の読解の中で、これらの高度な理解を意識できるようになるには、教科書で扱う文章とは別に、多読等の教材を用意する必要があるのではないか。

と、こんなことを書くと、「研究をすぐに指導に結びつけるな」と怒られそうなので、ここら辺で自粛させて頂きます 
物語の構造の研究が存在することに、純粋に驚き、そんなことも知らなかったのか、勉強しないとヤバいなーと感じました。

1 件のコメント:

  1. 談話分析に関して、説明文の文章構造を分類する方法を提案している研究は多くなされています。しかし統一的な分類方法はまだ確立しておらず、「説明文」として談話構造の分類を一般化していくのはなかなか難しいことなのでしょう。なんのためにその文章の談話構造を明らかにするのか、という目的に合わせて、それに応じた分類方法を探して用いるのではないでしょうか。

    文学作品に関しては、構造を一般化するのは不可能です。その行為自体、あまり意味を持たない気がします(しかし例えば、「桃太郎」がどういう話の流れなのかを分析したい、という風に一つの作品に限るのであれば面白いかもしれません)。何より、極端な例ですが、童話「桃太郎」が「桃から生まれた桃太郎が鬼を退治しました。めでたし。」では文学作品の意味がないですもんね。笑


    最近は日本の英語教育でも、これまで文レベルの指導に限定していたことの反省として、above sentencesの指導が意識されています。最近の教科書をみてみると、説明文の上には例えば「原因・結果」というような文章の種類が明記されています。
    このように、談話分析の分野が日本英語教育で注目され始めたのは進歩なのでしょうが、どのように指導に活かせるかはまだ手探りの状態でしょう。今後、特にリーディングの指導において談話構造の研究がどのように用いられていくか、興味を持っていきたいところです。

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