このブログを検索

2013年5月19日日曜日

テストを作るための設計書を書こう -『言語テストの作成と評価』まとめ-



 英語教師は、生徒の学習をきちんと測定してあげたいと、常に願っていると思います。それは、生徒の学習の努力が色濃く現れる定期試験は、正確に測定できるように、作成したいものです。

 ただ、どのようにテストを作成するかは熟知しておらず、過去の定期試験を引っ張りだして、似たような問題を並べて使っている方は多いのではないでしょうか。学級は毎年異なりますし、同じ内容を同じペースで進んでいるわけではないので、過去問が適当かは不明ですし、過去に実施されただけで過去問に問題がないとは限りません。


 今回はテストの精度を高めるために重要である過程である「テスト細目」の書き方を紹介します。(『言語テストの作成と評価』を基に記事を作成しています)
 テスト細目とは、テストで何を、どのような方法で測定するのかを明示する設計書のことです。


このテスト細目を作成するメリットは5点です。

1) テストを作成する際に、手元に設計書があれば、個人・複数のメンバーでのテストの作成を円滑にします。設計書があれば、個人にせよ、グループにせよ、製品を作るのは楽になるのと同様です。

2) テスト細目を作成する上で、テストでの測定の対象が絞られ、その精度を高めることができます。設計書があれば、製品を作成する上での無駄がわかり、効率的に質の高いものが作れるのと同様です。

3) テスト細目を作成しておくと、テストを実施する人に、作成したテストを深く理解してもらえます。設計書があれば、制作に関与しなかった人も製品の構造を理解することが出来るのと同様です。

4) テスト細目があれば、常にテストの目的が明確化され、適切な使用を推奨します。設計書があれば、その製品でできること、できないことが明確化されるわけです。

5) テスト細目は、テストまでの指導・準備教材の作成を可能にします。設計者があれば、関連グッズを作りやすいのと同様です。




 さて、ここまでテスト細目の大切さをわかった上で、テスト細目の作成の項目を紹介します。
 テスト細目とは以下の要素を記載することです。


1. テストの目的
i.e. 到達度テスト?クラス編成テスト?熟達度テスト?


2. 対象受験者
i.e. 年齢・学習レベル・受験の目的・教育背景など


3. 問題数、長さ、問題の区分
i.e. 制限時間から、どの程度の長さの問題を作成するのか、大問は何個で構成するのか


4. 測定対象となる言語能力の想定使用場面
i.e. 海外留学での授業の聞き取りなど
(テストの内容や方法を、想定場面に近づけ、測定された値を真に近づけるため)


5. テキストの種類
i.e. 書記言語or音声言語、出典、トピック、内容の難易度、文構造の複雑さ、言語の機能など


6. 言語技能
i.e. テストを解く際に必要となる技能、またその技能がどのような要素で構成されているか


7. 言語要素
i.e. 語彙レベル・文法項目への配慮、語用論的要素まで含むのかどうか


8. テストタスク
i.e. 実際の場面に即したタスクを用意するのか、統合テストor独立テスト、主観テストor客観テスト


9. 問題数および得点配分
i.e. 均等に点を振るのか、難しさに応じて配分を変えるのか


10. テスト方法
i.e. 多肢選択、空欄補充、組み合わせ方、書き換え、短文解答、描画、小論文、制限作文など


11. 受験上の指示
i.e. 例を示すのか、採点基準は事前に明示するのか


12. 採点基準
i.e. 文法・語法の正確さ/文脈上の適切さ/綴りの正確さを、どの程度で考慮するのか


以上の12項目を押さえたものを手元においておくだけで、テスト作成の精度や効率は上がるでしょう。
きちんと生徒の成績を測定してあげたいものですね。