このブログを検索

2021年1月31日日曜日

プレゼン資料作成の指導3ステップ

 割とよく出会う、キツいプレゼンテーション。

 極稀に刺さる、面白いプレゼンテーション。

 この差は一体、何にあるのでしょうか。


 思えば、総合的な学習などを中心に「じゃ、パワーポイントでまとめてね!」と指示し、評価に当たり以下のようなことがおきます。

・「コピペの嵐」

・「発表原稿の全貼り付け」


 「こんなはずでは、、、」と頭を抱えた記憶がありますが、思えば指導をしていないので仕方がない。というわけで、改めて「よいプレゼンテーションってどんなの?」を整理し、指導に役立てるだけではなく、自分のプレゼン技術も向上を図りたいと思います。


 (本記事では、以下の資料を踏まえて、改めて考えをまとめてみました。)

・プレゼン資料制作の専門家【プレサポ 高村】https://www.youtube.com/channel/UCxi5Igx4fMrEtyte4KpMj7A

・前田鎌利著「プレゼン資料のデザイン図鑑




初級の3ステップ


 プレゼンを作るにあたり、最低限確認しておきたい3ステップがあります。

 



プレゼンの初級①

「促す行動をイメージする」

 プレゼン資料を作成する前には、必ず目的を確認しましょう。その際、注意しておきたいのは、目的は絞られるほど刺さりやすい資料になるということです。具体的に促したい行動をイメージし、必要な情報を最適な手順で提示する。そのスタートの目的意識がブレてしまうと、不必要な情報が増えてしまい、本来の目的が達成が阻害されてしまいます。


 みんなに最適な走り方のフォームを理解してもらう

 ○「これを聞いた高校2年生の走り方を今日から変える


 そもそも大前提なのですが「理解してもらう」という目的であれば、プレゼン形式の発表は適切ではなく、「資料の配布」で良いはずです。あえて、「プレゼン形式を取る」ということは、「メッセージの発信」という側面を考えなければいけません。強いメッセージを固め、それに沿ってプレゼンを作ることで、自ずと「意味不明なコピペ」や「原稿全部のせ」のような発表は少なくなるでしょう。



プレゼンの初級②

「章立てから作る」

 目的を確認したら、次に「目的を達成するための筋書き」を描きましょう。

 例えば「明日から、この新しいトレーニングを導入する」という目的を設定したとします。次に考えるべきは「どうすれば聞いている人が取り入れてくれるだろう?」という聞き手の視点です。「聞き手の問題意識を統一するために、背景で現状の課題を整理しておかなければいけない!」「現状を改善するトレーニングの科学的根拠を先に述べておこう。」「全体が長くなってきたから、トレーニングの細かい留意点は控えめでサラッと流そう!」など、全体の構成から必要なパーツを配列していきましょう。


 「章立て」をイメージせず、プレゼンの冒頭から作っていくと以下のような問題が発生してしまいガチです。


・話がループする

・必要な情報量が不足し、メッセージが刺さらない

・余計な情報が増え、メッセージがぼやける 


 中級・上級になれば、効果的に目次のページを活用することが求められますが、ひとまず発表に目次のページを加えるかどうかはさておき、まずは目次から作成することで、収集すべき情報や、そのレイアウトが適切にイメージでき、最終的な時間短縮にも繋がります。まずは「タイトル」よりも、「章立て」から作成することをオススメします。


プレゼンの初級③

仕上げの「スリム化」

 ステップ2「章立てをつくる」の後、順調に作業を進行しやっとの思いでスライドが完成! そして、最後の仕上げ作業として「スリム化」を行いましょう。


 「スリム化」とは、「不要な情報を削ぎ落とし、短くシンプルにすること」。作成時には必要だと思っても、全体の流れを見返すことで不要に見えることも多々あります。


・「説明がダラダラしている」→「箇条書き」「図+口頭説明」

・「文になっている」→「体現どめ」

・「色が多すぎる」→「統一」


 本来、プレゼンは口頭の説明の補助に過ぎないはずなのに、気づけば、プレゼンの資料から発表内容を作成するという逆転が起こってしまいがちです。視覚情報として必要な項目だけを残し、基本的には口頭で説明を行い、スリムで簡潔なプレゼン資料を完成させましょう!




まとめ

① 促す行動をイメージする

② 章立てから作る

③ 仕上げの「スリム化」


 これらの3つの手順を踏めば、ひとまず「いったい、何だったんだ?」という発表を回避することができます。しばしば、発表を指導する際には「良かったグループの工夫を盗みましょう!」といった指導を行っていまいがちですが、「どうして最初から良くなる工夫を指導しないんだろう」と不思議に思っていました。世の中には様々なプレゼンのルールが存在しています。肯定的な配色は青否定的な配色は赤、プレゼンの掴みはユーモアで質問形式、見やすいフォント、効果的なアニメーションなど。

 グループで作成させる際には、各グループにプレゼンの参考書と「仕上げ係」を用意し、より良い発表に触れる機会を増やしてあげるべきなのではないでしょうか。

2021年1月17日日曜日

【図解】最強の学習習慣形成方法?!


 

・「試験勉強の勉強時間で学年1位のクラスを目指そう!」

・「高校生は『学年』+1時間の勉強時間を!」

・「学習時間を調査します!」


 教師をやっていると必ず耳にするフレーズ。そして、直面する「勉強しない子は本当に勉強しない」という課題。(正直なのはいいんだけどね!と開き直るしかありませんよね)

 さて、「家庭学習の習慣を作る」という目標を達成するために教師ができることは何なのでしょうか?今回は、習慣形成コンサルタント吉井雅之著「習慣が10割」を基に、生徒への促しを考えてみます。

 (本記事では、吉井 雅之著「習慣が10割」と、サラタメさん『【17分で解説】習慣が10割|習慣化できないのは、〇〇を知らないから』を基に、生徒の学習習慣を形成するテクニックの考察です。)




前提


脳は「正しさ」では動かない



 定期考査後、課題を提出を促されてから行い、それでいて成績の良くない生徒を見ていて、私は「あえて考査後にやるメリットなんてほとんどないだろうに、どうしてテスト対策を兼ねて、考査前にやらないんだろう。」と毎回不思議に思っていました。さらに、提出しない生徒と「その行動ってどうなの?」と尋ねても「自分でも頭悪いなと思うんですよね」と答える。

 

 詳しい話は本書を読んでほしいのですが、我々の脳は、意志よりも、「不快を回避する」という判断を優先的に行うそう。脳はストレスから身を守るための行動を優先する、と聞くとまぁ納得がいきます。


 「あえて考査後に課題を行う」という行動の背景を考えると ①「『課題を行う』という不快さの回避 をした上で、②『「提出せずに怒られる」という不快さの回避」 という合理性があるのでしょう。たとえそれが、合理性に欠けたものであっても。


 このことからわかるのは、「メリットを並べた正しさ」より「サボりたい!」を優先してしまうというのは、脳の性質上、一定の整合性が取れた行動だということです。

 

 さて、彼が家庭学習の習慣を身につけるために、私には何ができるのでしょうか。習慣形成のコツは大きく4つあるそうです。

 



習慣形成のテクニック①

・欲望の明確化


 脳は本能的に「不快」を回避します。そのため「学習=快」という前提を作らなければいけません。そのため、習慣形成のテクニックの1つ目は「学習によって得られるメリットを言語化する」ことです。

 

 教員が目標を書かせる場合、「今学期の目標点を書こう」や「何ができるようになるかを書こう」という部分でとどまってしまいがちです。しかし、これらを書かせたところで、そこには「生徒の気持ち」がありません。肝心なのは、欲望と結びつけハッキリと意識させることです。


 ・「考査でいい点数を取る」という結果がどういうメリットを生むのか

 ・「英語ができるようになると、どういった点で良いのか」


 「金になる!」「志望校に受かる!」「どうせやらないといけない受験勉強を前倒しで行い、後を楽にする!」「出川イングリッシュは面白いんだけど、本当の解答をわかった上で見るからもっと面白くなる!」「単純に追試受けなくて済む!」など、品はないかもしれませんが、「心と結びつける」という点ではかなり有効なように思います。


 「『教師として』崇高な存在でありたい」と考えてしまいがちですが、実際に有効なのは「『ペテン師として』でも実利的な存在であるべき」なのかもしれません。もちろん、ここまで明確にしなくても動ける生徒もいますが、その“優等生”と“怠慢な生徒”の差は、現段階で「メリットが見えている」かどうかだけなのかもしれません。(改めて思えば、勤勉で英語が得意な生徒がよく勉強するのは、決して崇高であるわけではなく、単に「更に自己有用感を感じたい」という欲望で動いている可能性もあると思うと、学習の動機に貴賤はないのかもしれません。)




習慣形成のテクニック②

・一番小さく始める



 習慣形成のテクニックの2つ目は、「ハードルをとにかく下げたルールを決める」ということです。

 決めた習慣を実行できない場合、決めた行動規範を守れない自身の怠惰さに不快さ・無力感を覚えます。そして、再開しても守れないかもしれない恐怖に襲われ、習慣の定着し損ねます。そもそも、やる気があるときは「やめろ」と言われても勝手に実行します。ここでの目的はあくまでも「やる気の有無に関わらず、一定の習慣を形成すること」です。その先にある「到達するかしないか」はひとまず別問題ですし、習慣が形成した後に改善すればいい。とにかくまずは、習慣形成のための簡単なルールを立てましょう。


 実際、「毎日、問題集を3ページする!」といった目標をいきなり達成できているのを見た覚えがありません。兎にも角にも、低すぎる行動規範を提示することから始めればよいのではないでしょうか。「1日1回、勉強机に座る!」「日記を1行以上書く」といった低くてもいいのでとにかく行動規範を思い描くのがポイントかと思います。

 ここでの「低すぎる習慣のルール」は「低い目標(単語テストで○点取るなど)」に非ず「簡単な行動規範(単語帳を開いてみる)」であるのもポイントだと思います。




習慣形成のテクニック③・④

・時間と場所を固定する

・人を巻き込む



 習慣形成のテクニックの3つ目は「時間と場所の固定」、4つ目は「人を巻き込む」ことです。

 これらは実感があるので、多くはまとめません。





最強の学習習慣形成方法?!


 以上を踏まえて、実行可能かどうかを度外視し、最強の学習習慣形成の方法を提案します。それは以下のルールです。実践できたら面白いだろうなぁ。



毎日○時から○分間、クラスで勉強する様子をビデオ中継する

【補足ルール】

①開始時間だけは守る(すぐに抜けてOK)

②中継はミュート(目的は学習習慣)


これができると、メキメキ勉強してしまいそうな気がします。


[メリット]

・中継に使用するため、スマホを見れない

・強制的に時間と場所を固定


[デメリット]

・通話でグダグダになる

・参加者が減って孤立感が生まれる

・通信費・環境的な側面

・管理

・何していいかがピンとこない生徒は参加できない


2021年1月11日月曜日

理想の働き方へ近づける「DEAL」の4ステップ



 「全てを全力で取り組む」をモットーに頑張って教師をしてきましたが、当時を振り返ると、期待したほどの結果が得られず、しんどいばかり。今回は、理想の働き方へ近づけるDEALの4ステップに照らし合わせて、今後の抱負を整理しようと思います。なお、今回の話は『【20分で解説】週4時間だけ働く。| ゆとり世代の理想像「ニューリッチ」になるための4ステップ』https://www.youtube.com/watch?v=ybbnTNnLkHw&t=31sを参考にしています。20分程度のわかりやすい動画なので、よければご覧になってください。



DEALの4ステップとは?

DEALの4ステップとは、ティモシー・フェリス著『「週4時間」だけ働く。』で紹介されている考え方です。


本を超ざっくりまとめると
 「オールドリッチ(とにかく頑張って使い切れないほど稼ぐ)ではなく、ニューリッチ(やらないことを決めて、精神的に豊かに暮らす)を目指す」


「ニューリッチ」とまではいかなくても、精神的な豊かさを目指すために、DEALの4ステップの考え方は身につけておきたいと思いました。4つのステップについて考えてみます。


DDefinition(定義)「どうなりたいのか」

まずは、自身の目指すべき姿をしっかりと思い描きましょう。その際に留意したいのは「汎用的なオールラウンダー」を思い描かないこと。オールラウンダーも魅力的とは思うのですが、雑多な有象無象で精神をすり減らしてしまいます。ここでの目指すべき姿は「自分自身のライフスタイルに照らし合わせた上での理想」なので、全ての業務をマルチにこなせる超人ではなく、具体的な得意分野、特に自分が能力を発揮したい分野において活躍していて、なおかつ働いていて気持ちがいい状態の「理想」を思い描きましょう。

現在の私の場合は「成績上位者が自主的に学習に取り組み、進路実現を達成するための仕組みを整備する」です。ここでの「理想の定義」は、一生スパンのものではなく、あくまで1年や半年スパンのものであるほうがよりイメージしやすいのでいいと思います。理由は後述。



EElimination(排除)「何を捨てられるか」

教育の業種において、様々な場面で直面するのが「必須じゃないけど、奨励されていること」。例えば、丁寧な添削、自主的な補習、部活指導、HR日誌などなど。職場には様々な人がいて、丁寧に行っている人もいれば、一切やらない人もいる、正直なところ任意に任されている業務が山のようにあります。これらをまずは排除していきましょう。

仕事を排除する際に気をつけなければならないのは、「理想」と照らし合わせて考えること。確かに、「何でもできるオールラウンダー」ならば、すべての業務を丁寧にこなすのでしょうが、それをしていると本当の豊かさからかけ離れてしまいます。

「いや、さすがにやめられないでしょ」と思ってしまいがちですが、ここで留意したいのは「ひとまず、やめてみる」という勇気かと思います。やめてみてわかるのは、「この要素だけは残さないといけないのか」というエッセンス。逆に、問題が生じそうな予兆が起きれば、その際に、エッセンスを残した代案で対応しましょう。ここでの「排除」が指すのは、極端な「廃止」ではなく、「一旦停止」くらいだと捉えましょう。ひとまず、Dで思い描いた「理想」に近づけたら、その後「新たな理想」が浮かんでくると思いますが、その際に回収すれば良い。ひとまず、全てのことに満遍なく注力するのではなく、手っ取り早く「理想」を実現してしまい、余力を残すことが豊かさに近づくカギかと思います。

私の場合は、Dの手順で「自主的な課題の整備」を掲げましたので、それ以外の業務については最低限でこなしています。もちろん、他に様々な業務も抱えていますが、それらについては「最低限運営できる程度」の質にとどめ、こだわらないことを意識しています。確かに、生徒の発表を見るたびに、「おっと、これは指導してあげないと、、、」という強迫観念に駆られるのですが、今は後回し。ましてや、「理想」とはかけ離れているにもかかわらず、周りの先生から「あの仕事はあいつが適任!」と思われてしまっては、いつまでたっても理想に近づけることができません。心を鬼にして、断捨離を行いましょう。あくまでも「一時的に業務を引き受けている状態」を意識することが大事かと思われます。



AAutomation(自動化)「自動化する」

断舎離した後、「自分の理想に向けて取り組みたいこと」が顕在化したら、次はその「自動化」を考えることです。本の中では、投資や外注といった方法が紹介してありましたが、教育ではこれらは難しいですが、「自動化」はやってやれないことはないように思えます。日々、自転車操業状態であれば、「自動化」まで想定して準備することはできませんが、タスクに追われてばかりいてはなかなか理想には近づけません。余裕のある状態を作り、「次回に使い回せる財産」をたくさん作っていきます。

重要なのは、「全力で取り組む」のではなく、「自動化する方法を考える」ということです。確かに「ただ全力で取り組む」のであれば、頑張っただけ成果を残すことは可能かもしれませんが、再現性を考えた際、毎回「全力」を求められると精神的にしんどさが生じます。さらに言えば、あくまでの「個人の努力」で運営を行うと、後任の人がしんどい思いをするにとどまらず、その後任を見た際に落胆してしまうのは自分自身です。「教員」という、毎年人事配置や生徒が変化する業界において、「業務を自動化する仕組みを考える努力」をしていくべきなのではないかと思います。また、自動化することで、運営そのものの負荷を減らし、整った環境の中で生徒と向かい合うことがさらに効率的になると考えられます。

私の「自主的な課題の整備」という理想の場合は、「対面での放課後補習を行う」のではなく、「文法の説明と練習問題のパッケージを作成し、オンラインで受け取る仕組みを作る」という点に着地しました。更に、Youtubeの解説動画やClassiといった、外部の材料で切り貼りし、とにかく少ない負担かつ、ある程度のマニュアルさえあれば、誰でも作成可能な範囲での整備を意識しています。確かに、毎年生徒の学力層は同じではないですし、私が違う学校に転勤した際にはそっくりそのまま運用できないかもしれませんが、大枠の自動化が整っていれば、コンテンツを微調整すればよいだけであり、毎年0から始める必要がない分、楽になると信じています。「自動化」がキーワードかと思います。



 LLiberation(解放)「新たな刺激を受ける」

理想に向けて断捨離し、そして自動化に取り組む。とにかく、時間と精神的な余裕を確保した後に行うのが、「新たな刺激を獲得し続ける」ことだと思います。バリバリ運営を回すことも可能だと思いますが、前任校でそれらを全力で運営していて思うのは、「新しいことに挑戦できていなかった」という反省です。「全力で取り組む」のは素晴らしいことだと思うのですが、それは短期間的な発想であり、長規模的視点に立つと、「分析・改善に割く余裕がない」ということでした。決められた業務を、決められた通りにこなすだけで疲弊しきっていた当時、「これ以上よくする」という発想が生まれるはずもなく。さらに、多少の工夫ならば盛り込むことはできるものの、すでに煮詰まってしまっている場合が多く、斬新な発想や改革は異なる分野や領域から着想を得なければイノベーションは生まれないような気がします。努力だけではなく、時に趣味や読書といった刺激により、自分のカラーを加えるためにも、自分を築くための自由な時間が必要なように思われます。また、この「L(解放)」の要素があるからこそ、次の「D(理想)」が生まれるのではないでしょうか。


まとめ

 本書では、「週4時間だけ働く」というテーマでしたが、実際にこの業界では不可能です、というか勤務時間は決められています(むしろ無視して働きすぎてます)。しかし、我武者羅に働いた日の夜、ふと我に返り「本当にやらないと、生徒はダメになっていたのだろうか?」と虚しくなることがあり、改めて「異様な働き方」を実感しています。(引き継ぎが一切なく、後任のことを考えていない仕事や、個に依存しすぎている仕事など、愚痴を言いだしたらきりがありませんし、実際私もやってしまっていると思います(笑))なので、今年度は「自動化」という要素を念頭に、いろいろなことに取り組んでみようと思います。(自動化しまくった結果、育休とか取れるといいなぁ。)

2021年1月3日日曜日

【LHRネタ帳】本当に弱者は美しいのか?ニーチェ「ルサンチマン」を通じて

 哲学者ニーチェは「ルサンチマン」という概念を提唱した。「ルサンチマン」とは「強者に対して、弱者が仕返しを欲するモヤモヤ」。

 人間は、己の存在意義・拠り所を求めるべく、自身より優れている人に対して何かしら理由をつけ、自身のほうが勝っている理由を探す。そして、時にその解釈は曲解を生み、誤った解釈を引き起こす。

 例えば、「人は外見ではない」という言葉は、「外面の美しさの否定」でとどまらず、「外見が優れた人物は、内面では優れていない」という曲解を生むことは少なくない。ルックスの良い人を見ると「内面は怪しい」と思いかねないし、逆にルックスの良くない人を見ると「性格が良さそう」と思ってしまうのが世の常である。もちろん、「イケメンっぽいクズ」や「愛すべき醜男」も浮かぶ。だが一方で、世の中には「性格すら良いイケメン」や「マジでどうしようもない醜男」も割といる。「金持ちは性格が悪い」とか「アホな方が世の中楽しい」といった言葉もよく聞くが、「性格のいい金持ち」や「人生を満喫している賢者」だって割といるはずだ。

 強者がすべての点において勝っていたのであれば、弱者はツラい。「凄いあいつも、どこかで劣っていてほしい!」と願い、それが具現化されたドラマや小説が生まれ、それらを通して弱者は心を潤す。しかし、それはフィクションの中の一例でしかなく、世界の真理ではない。実際、「凄いあいつ」は多くの点で、自分より凄い。


 さて、「ルサンチマン」というフィルターを通さない世界を考える。「弱者は負けていて、強者は優れている」という言わば「弱肉強食」だけの世界。「何だか救われないなぁ」と思うが、都合の良いフィクションのような大逆転劇は珍しい。珍しい故に話題にもあがるが、蓋を開ければ、結局のところ、泥臭い努力だったりする。要は、「ルサンチマン」は虚構に過ぎず、世間は割とシビアにできている。

 「あっ、これは『ルサンチマンだ!』」と気付き、世の中を正しく捉え、日々コツコツ自己研鑽を行うしかないのかよと、高校時代、国語の先生の机に貼ってあった『凡人よ、時を惜しめ』(手書き)を思い出す。TSUTAYAで借りた『ドラゴン桜2』と、最近お気に入りのYOUTUBEチャンネル「ぴよぴーよ速報」を通じて、ぼんやり思いました。