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2015年9月19日土曜日

説得力の条件


 私たちの生活に、「他人を説得する場面」は多くないかもしれません。しかし、説得力を持てば、他人を思い通りに操れたり、重要な場面を切り抜けることができることができるでしょう。生徒には是非とも、説得力を身につけ、社会で不自由さを感じる場面を少しでも減らしてやりたい、というのが私の願いでもあります。  また、教師という職業は、生徒や保護者に対して(もちろん「傾聴する」というのも重要なのですが)「伝達する」ことが仕事の核なのではないでしょうか。特に、生徒指導では社会のルールを教育する過程で説得しなければならない場面は多々、遭遇するものです。さらに、「授業を聞かせる」という側面にはある種、説得力が求められるのかもしれません。 今回は、丹野宏昭・児玉健『人狼ゲームで学ぶコミュニケーションの心理学』を基に、説得力について学校という場面を自身で考えながら簡単に紹介します。




説得力の4つの基本要素

 説得力には4つの基本要素があります。以下の要素を意識すれば、説得力を獲得することができ、相手を思い通りに操ることができるかもしれません。


⒈ 「損得」

 単純に「説得を受け入れれば得をする」ということを示せれば、説得力が得られます。よって、説得力を獲得する際には、賞罰の提示を意識することが有効です。  英語の授業で言えば、「この表現を身につければ、こういう場面で活用できるね」といった引っ張り方は英語学習の「得」を強調した説得、「これをやっておかないと、テストで困るよ」といった引っ張り方は「損」を強調した説得に当たるのでしょう。


⒉ 「好感度」

 単純に「説得してくる人が好き」ならば、説得力が得られます。よって、説得力のある人間を演じるためには、まずは魅力的であることを意識することが重要です。  確かに、同じような生徒指導・授業展開をしても、生徒がついてくるかどうかは大きく違う場合があります。言い方等もあるのかもしれませんが、やはり生徒からの好感度という要素は少なからず影響しているように感じますし、若い教員としては「ただ歳が近いというだけで好感度を得られていて得している」という場面を非常に多く感じています。  「説得力を保つために魅力的であれ」というのはわからなくもないのですが、少し厄介なのは「魅力」というのは人によって定義が違うため、自分が目指す魅力的な人間像が生徒の持つそれと一致しない場合があったり、特定の生徒だけ特に嫌悪感を示してしまう場合があります。ただ、だからといって生徒に媚びていくのは魅力的とは異なるので、やはり自分の出来る範囲で「魅力的であろう」と思えばいいのかもしれませんね。私は現在、「身体的な強さ」に魅力を感じる生徒を多く持っているので、少しずつ体を作っています、、、効果があるのかはわかりませんし、完全に娯楽としての領域なのですが。


⒊ 「専門性」

 トピックに関する専門的知識・技能・経験を示せれば、説得力を得られます。なお、受け手が専門性を判断する要素は学歴職業経験度根拠の明示ユーモアの有無等があるそうです。よって、実際には知識等が無くても、ひとまず慣れている雰囲気を醸し出すことが重要です。 生徒指導に関しては専門性というよりも経験面を強調し、例えば「社会では通用しない」という言葉を使う際には、実際に通用しなかった経験などを加えることができれば、説得力が増すのかもしれません。教科指導では、言わずもがなという感じがしますね。


⒋ 「一貫性」

 単に「嘘をつかない」「ブレない」という印象を持たれていれば、説得力を得られます。これらの印象は、その個人のパーソナリティや関係性にも強く依存するので、普段からの言動が重要です。 生徒指導で重要なことの一つはやはり一貫性だと感じています。「ルールを守る」ことを強調している教師の判断に一貫性が不足している場合はやはり、説得力に欠けているように感じられます。教科指導でも、その単元や授業の背景にある教師の哲学や信念が一貫している先生の授業は本当に説得力があるように感じられます。お世話になった理科の先生は「論理的に、因果関係を踏まえ、積み上げて考える力を」、世界史の先生は「全ての知識と正しさは歴史上、作り上げられた限定的なものに過ぎず、常に問うていく力を」といった信念をお持ちで、その一貫した信念は授業内に説得力をもたらしていたと感じます。




 以上が、説得力の条件となります。まとめるにあたり、元の本での記述を一部、拡大解釈している自覚があります。ご了承ください。  本書ではソーシャルスキルトレーニングとして、「人狼ゲーム」のルールや展開が紹介されています。「人狼ゲーム」では基本的に他人と騙し合うのがゲームの展開なのですが、その本質は「他者の説得」と「嘘を見抜く」の2点だそうです。生徒が社会に出ていく上で、どうか身に付けて欲しいスキルだと思うので、機会があれば、上手く活用したいと考えております。






以下は、記事に盛り込もうと思ったけれど、流れに組み込めなかったものをまとめておきます。


相手によって変わる説得スタイル(おまけ)

 効果的な説得は、説得される側の人によって違います。よって、相手によって説得のスタイルを変えることが大切です。以下では3点紹介します。

一. 男性には、高圧的になるなかれ

 男性は高圧的な説得に対して、非常に嫌悪感を示すそうです。女性に対してなら効果的なのかどうかはさておき、男性に対しては高圧的な説得は特に避けるべきだと意識しておくことが大切です。

二. 知性の高い人には、非論理的になるなかれ

 知性の高い人は、論理の一貫性を重視している場合が多く、そのような人に対しては特に論理的な展開を意識して説得するべきでしょう。一方で、知識の低い人は「複雑さ」や「わかりにくさ」に専門性を感じてしまうらしく、例えその説得が非論理的でも、複雑そうな印象を与える説得が効果的なそうです。

三. 不安を抱く人には、救いの説得を演じよ

 不安を感じている人は説得を受け入れ辛い傾向にあるので、説得を始める前に、まずはその人が抱いている不安を解消することから始めるべきです。しかしながら、不安を感じている人は説得を受け入れ辛い状況にあるのと同時に、不安を解消させる欲求を強く持っていることから、その不安を解消する方向で説得をすれば説得が成功しやすくなります。とにかく、不安な人を説得する際には、その不安を分析し、「不安を解消するための説得」を考えてみるといいでしょう。