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2021年3月14日日曜日

就職希望者への進路指導 ー令和編ー

    

今回は、リベラルアーツ大学『副業に興味がある人は絶対に身に着けておくべき3つのスキル【稼ぐ 実践編】』をもとに、就職を希望する高校生に対する進路指導を考えてみたいと思います。



高校教員は世間知らず?


進学校の定義は2つあると考えています。


①「難関大学に進学させる学校」

②「就職ではなく、短大・専門まで含めた進学を見据えた指導する学校」


私自身、就職希望がほぼいない「進学校」出身です。教員になるためには教員免許を取得する必要があり、そのためには大学に進学するのが一般的。よって、私に限らず「高校の時点で進学校に所属してきて、就職指導が身近でなかった」教員は一定数以上存在するはず。世に聞く「教員は社会に出たことがない」というやつですね。教員採用試験に向けて「キャリア教育」には目を通しましたが、「社会に出る前の準備としての教育」に対して、一般常識の範囲を超えたものは持ち合わせていませんでした。



一方で、「高校」と一括にしても公立高校は多種多様で、私立に採用される以外はどのような高校に赴任するかは人事次第。自身が経験した「進学を中心に指導する高校」の教師に空きが出ればそこに赴任することもあれば「就職を中心に指導する高校」に欠員が出て赴任することもあります。全く希望していなくともそこに赴任されるケースも多く、経験のない就職指導を手探りで行うことも少なくありません。


かつて工業高校で講師を経験し、現在は農業系の学科がある高校で勤務しているので、進路志望が「就職」が珍しくない状況。人事に対する不満とかはあまりないのですが、感じるのは「就職指導手探りだけどいいの?」という不安はありました。教員採用試験の勉強で「キャリア教育」とかを一応勉強したのですが、「就職先から見て、私の指導はニーズに合っているのかな?」という疑問は拭いきれません。指導要領を土台としているものの、「自身も経験した大学入試の突破」というニーズに合わせた授業を組む進学校に対して、そもそものニーズが不明瞭な状況で行う授業にもやもやを感じ、いつしか「国の方針である指導要領を盲信しよう」と腹をくくりますが、「学校生活の何に重きを置けば、生徒が幸福に近づけるのだろう?」という疑問は頭の中を渦巻きながら日々を過ごしています。



「従来の就職指導」に対するイメージ


「高校を卒業したら、就職を考えています!」

「よし!では残りの高校生活は基礎的・凡庸的能力を身に着けよう!


なんて会話を聞いたことがありません。


学習指導要領の「キャリア指導」において、学校では基礎的・凡庸的能力として様々な能力を育成するべきだと挙げられています。具体的には以下の4つの領域に下位分類されているようです。


・人間関係形成/社会形成能力

・自己理解/自己管理能力

・課題対応能力

・キャリアプランニング能力


雑に総括すると、「周りと上手くやり自身を理解した上で律し問題をうまく対処できる仕事好きな子ども」を育成しましょう!という趣旨が国の方針になります。確かに「良いこと言っているなぁ」と思う一方で、残念ながら体感でいうとあまり浸透してないイメージです。




一方で、リアルな「進路指導」では以下のような会話が展開されます。(偏見)


「高校を卒業したら、就職を考えています!」

「そうか。では残りの高校生活は内定をもらえるために、出席と提出物と部活を気をつけなさい。生徒指導を受けるなんて言語道断だからな!


従来の「就職」では、一つの企業に終身雇用され人生を全うするというのが理想な形でした。一度入社してもらえば、企業内で研修を通じて人材育成され、企業の中で一人前となり、企業に還元する。そのような「家族的な経営」が理想だったため、知識や技能うんぬんはさておき、企業から見放されることのないように、最低限の規則を遵守する生徒を育成することが求められている印象を受けます。


よって、校内では「校則の遵守」「提出物の徹底」といったことが重きを置かれ、それをもって1つの就職指導としている気がします。確かに、インターンシップへの参加・専門教育(工業・農業など)・面接指導等はされていますが、進路指導部や専門教育の教諭が中心として行われており、英語科の教諭・担任という立場で考えると、現状「就職のための指導」としては「規則の遵守」しか行っていない気がします。


一言でまとめると「組織人の育成」という意識が根底にあるのではないでしょうか。




終身雇用制度の崩壊


従来の企業は採用した人材を育成し、彼らの生活をある程度保証してきましたが、世の中は変化してきています。主な風潮は2つ。1つは欧米を中心に「成果主義へのシフト」、そして働き方改革による「ライフワークバランスの見直し」から生じた「副業の自由化」です。


1つめの「成果主義へのシフト」により、年功序列で給料が上がる想定が崩れます。つまるところ、自身で絶えず学習を続け、パフォーマンスを高めることが出来なければ、収入を高めることができません。


2つめの「副業の自由化」は、実際多くの企業で見られます。残業の規制・個人のスキル習得・人件費の削減に伴い、「一企業から給与をもらう」という勤労観は崩れ、自身でサブの収入を獲得する風潮が生まれつつあります。


従来であれば「規律を守る生徒を送り出せば、企業でぬくぬくと育ててもらえる!」と思っていましたが、成果主義では一定の研修期間を超えれば即戦力としての働きを求められるため、幅広い業種でも通用する一般的なスキルについては学校教育の中で培った上で雇用されなければいけません。また、一企業での働きとは別に、高校を卒業して副業の知識・技能を育成し、自身の収入を増やしていく能力も育てる需要が高まるように思えます。


 


次世代に求められる能力


以上の背景から、

「次世代の労働」=「ドライな雇用関係」+「副業」

と想定すると、従来の「組織人」としての教育では不十分なように思えます。
というわけで、次世代を生き抜く上で意識したい能力を3つ紹介します。



行動力

育成を図りたい能力の1つが「行動力」です。言い換えると「フットワークの軽さ」「瞬発力」とも言えるかもしれません。


従来の「基礎的・汎用的能力」の中で言えば「自己理解・自己管理能力」の解説に含まれる“前向きに取り組む態度”に該当する内容なのですが、埋もれてしまっているのでピックアップして強調したい能力のように思えます。


昨今、YouTubeや情報の手に入れやすさを踏まえると、興味関心を持てば自身で学習/実践を進められる環境が整っています


例えば、音楽が好きなのであれば、インプット面では演奏の技術・作曲を行う上での基礎知識・音楽編集するソフトウェアの紹介・流行している曲の解説。アウトプット面であれば、自身で動画を撮って配信。自身で調べ、身につけ、行動すれば、学校に在学中にでも活動することは可能です。


「今はまだよくわからないので、専門学校や然るべき教育機関に入学してから頑張ります!」「就労して、ある程度知識を蓄えてから行動します!」といった行動を先延ばしにする選択は、レールのない道を進むことの出来ない態度の現れであり、どこかで意識を変えなければ、おそらく一生行動を始めることがない気がします。



これらの行動力の育成については

・「情報収集能力(検索し、取捨選択する力)」

・「タスク管理(取り組む課題と順序の設定)」

・「成功体験」

を意識して課題を設定する必要があるように思えます。



より具体的に考えると以下の手順を踏むべきなのかもしれません。


①成功体験を感じ取れやすい機会の設定

 (文化祭や学習成果発表会等)


②情報収集のノウハウを指導

 (検索方法・まとめ方の指導)


③課題解決へのタスクのリスト化

 (タスクのリスト化+順序を整理する課題)


このような活動を通して、学級経営を行わなければならないのかなぁと感じました。

無論、「行動力」については年間を通じて強調したい能力なので、クラスのスローガンであったり、担任が口癖のように強調してやる必要があるのかもしれません。



時間管理能力


育成を図りたい能力の2つ目は「時間管理能力」です。先述の「行動力」の下位区分の「タスク管理」と共通する部分が大きいのかもしれませんが。


時間は有限であり、コストパフォーマンスを意識するのは非常に重要です。限られた時間の中でスケジューリングを行い、常に全体の進捗を意識しながら調整を行うメタ認知的なスキルについては、意識して育成を図るべき項目です。


この能力については、行事に限らず、普段の授業でも育成を図れる能力のように思えます。


・授業「制限時間の設定」

・HR「学習計画の設定」

・行事「行事までの進捗状況の確認」

・部活「大会までの練習計画」


このようなスケジュールを意識した活動を通じて、自身で「全体の時間を意識しながら、各作業にかける時間を調節する習慣」を身に付けさせる必要があると感じました。「不要なことに時間をかけすぎる」とか「一夜漬けの学習」といった効果の薄い活動を自身で排除する能力を身に着けさせる必要性を強調しておきます。



経済感覚


この項目が最も難しい能力のように思えます。育成を図りたい能力の3つ目は「経済感覚」です。経済感覚については、高校入学時にしっかりと時間を掛けて伝えたい項目の一つのように思えます。


経済感覚は従来の教育課程にもあまり含まれておらず、既存の活動に乏しいため現段階で私にも具体的な方法は浮かんでいません。


具体的には

高卒を対象とした求人票の見方

生きる上で発生する支払い(生活費&税金)

生涯賃金

資産運用

といった内容について、活動を通しながら学ぶ必要性を強く感じています。


この記事をまとめる上で参考にしたリベラルアーツ大学では「簿記3級の取得」を推奨していました。現時点で、個人的に簿記の勉強を進めているのですが、これをそのまま生徒に勧めることには賛成しかねます。というのも、現時点の体感なのですが、経済感覚の素地が全く育っていない生徒が多く、素地の育成を先に行わないと知識が上滑りしてしまうと考えるためです。


ただし、無断でアルバイトをする1・2年生と対峙したり、無謀な一人暮らしを計画する3年生と出会ってきた経験則から思うに、上記の経済感覚は最低限身につけた上で、自身で適切な判断ができるようになってほしいと心底思っています。



まとめ


「教員は社会を知らない」という言葉は、現代においても飛び交っていると思います。無論、「教員だって社会だろ!」と思う一方で、経済活動と接していない分、自身の知識不足を不安に感じています。


普段、教科指導のことで頭がいっぱいなのですが、進路指導や卒業後の生徒の姿を考えると、上記のような能力については指導してやらねば、、、と強く感じています。


具体的な活動等がうまくハマった際には、また紹介させてもらいます。


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