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2021年2月28日日曜日

英語の表現の幅を広げる「SVO練習」

  

「生徒の英語の表現の幅を広げたい」

「味気ない英文の添削に飽きた」

「リライトさせても全く英文が良くならない」



今回は、中山裕木子著『英語は3語で伝わります』をもとに、生徒の表現を広げる練習をまとめます。




英作文のドーピング


生徒のライティングを指導する際に、私は最後の「ドーピング」として次のような指導をしてしまいます。



困ったら、次の表現を頼りなさい。

① It is important for me to speak English.

② It makes me happy.

③ There is a boy.



英作文が苦手な生徒は「日本語をそのまま英語にしようとする」ために、英作文に苦戦します。そこで、表現に困った際には馴染みのある構文である3種(①形式主語 ②SVOC ③There is...)を思い出し、単語を置き換えて乗り切るように伝えています。






「便利」は「不自然」


私がついついしてしまいがちなドーピング的な指導は、「日本人にありがちな英語」を生んでいるようです。生徒の英作文を見てみると、全員がコピペしたかのように同じような表現ばかり。採点作業をするたびに毎回思うのですが、「インスタントラーメンばっかり食っている感覚に近いというか、何かもっと多様な英文見ないと自分の脳がおかしくなりそう」というのが私の悩みでした。便利な構文はピンチには有効なのかもしれませんが、これらを頻発するとすると、途端に「こてこての英語」になってしまいます。



中山裕木子著『英語は3語で伝わります』では、以下のように述べられています。


「日本人にありがちな英語」は間違っているわけではありません。しかし、「3語の英語」の発想を持つことで、もっと英語がラクになり、話すことがたのしくなります



ここで述べられている「3語の英語」というのは、実際の3語ではなく、主語・動詞・目的語(SVO)で構成される表現です。


例えば

My job is an English teacher.

I teach English.


どちらの表現が自然で、シンプルか。もちろん状況によって使い分けるのは大前提ですが、しばしば上の形に捕らわれ、表現の幅を狭めてしまっているのかもしれません。表現の意図をシンプルに捉え、より自然な表現を使いこなせるようにするために、あえて「便利な表現」をシンプルな「3語の英語」に置き換える必要性を強く感じます。



 


「3語の英語(SVO)」テクニック3選


本書では英語を組み立てるコツが10個紹介してありましたが、個人的に「特に紹介したい!」と思うテクニックを3つピックアップします。


コツ1 be動詞を捨てる


「私の趣味は読書です。」

△ My hobby is reading.

→ I enjoy reading.


「インスタは若い人たちに人気です。」

△ Instagram is popular among young people.

→ Many young people use Instagram.


中学校1年生の最初で習うbe動詞。非常に便利な表現ではあるものの、英語らしい「主体」というものが存在しない表現です。be動詞で表現したくなる文章をあえてbe動詞を用いない形で組み立て直し、主語・動詞・目的語の感覚を身につけるために非常に有用だと感じました。



コツ2 There is/are構文を捨てる


「ネットに問題が生じています。」

△ There are some problems with the internet.

→ The internet has problems.


「京都には多くのお寺があります。」

△ There are many temples in Kyoto.

→ Kyoto has many temples.


「〜があります」という日本語らしい表現は、ついつい全て"There is/are..."を用いて表現しがちですが、主体をイメージすると"have"という動詞のカバー範囲の広さを改めて感じることが出来ます。



コツ3 形式主語itを捨てる


「あなたの状況はよくわかります。」

△ It's easy for me to understand your situation.

→ I understand your situation.


「英語を学ぶことは大切です。」

△ It's important for us to learn English.

→ We should learn English.


困ったときの便利なフレーズ"It is [形/副] for [人] to do"の形式主語ですが、あえて改めて文の主体を捉え直すことにより、より口語的で馴染みある文に言い直すことが出来ます。



この他にも、全10パターンのコツが紹介してあり、どれも表現の幅を広げるために、早い段階で身につけておきたい感覚だと感じました。





リライトで活きる「3語の英語」


これらのテクニックを学校現場(授業内)で活かす方法を考えてみます。基本的に想定する学習者の層は「英作文に馴染みのない」〜「最低限の英作文ができるが表現の幅が乏しい」生徒です。



STEP1 ライティング


まずは下書き作業をさせます。英検のライティング練習等の流用で問題ないと思います。


・あなたは学校の制服に賛成ですか。英語であなたの意見を述べなさい。




STEP2 「英→英」言い換え練習


次に「英→英」の言い換え練習をさせ、テクニックの習得を図ります。

上記で挙げたテクニック別に、言い換えやすそうな例文(日&英)を並べ、「別の英文で表現しよう」という過程を練習させることで、英語らしい表現を刷り込むことが目的です。


・次の英文をbe動詞を用いない形で言い換えなさい。

「私の趣味は読書です。」

 My hobby is reading.


・次の英文を"There is/are..."を用いない形で言い換えなさい。

「京都には多くのお寺があります。」

 There are many temples in Kyoto.


 


STEP3 リライト


STEP1で書いた自分の英作文を改めてリライトさせます。STEP2で英語らしい表現の感覚を強化しているので、特に「序論と結論が一語一句同じ」部分であったり、複文に跨って同じ表現を繰り返している部分について、どのように書き換えればよいのかの引っかかりが得られ、自分自身で行うリライト活動の効果が高まるのではないでしょうか。




まとめ(と本音)


研究授業等で「リライト」の活動を見るたびに、「自分が生徒だったら困るだろうな」と思っていました。というのも、「100%で書いた英作文」を書き直したところで、劇的な変化はなかなか得られないと思ってしまうからです。


今回の「3語の英語」を知り、「型にハマりきった日本人らしい英文」を、日本語特有の主体が明確でない文から抜け出し、主体を意識した表現に変えるという過程を改めて考えさせられました。非常に月並になりますが、今回のテクニックを挟めば「リライトめっちゃ充実しそうじゃん!」と思いました。


一方で、本書で挙げられていた言い換え方で「彼のプランは面白いと思う」"I found his plan interesting."→”His plan interests me."という部分を見た時に、動詞"interest"を使いこなすというハードルの高さを感じ、改めて構文の利便性&破壊力を痛感しました。確かに(偏見に過ぎませんが)予備校・塾の目指す「減点されない英語」を目的とするのであれば、構文を使いこなせば十分なのかもしれません


ですが、「即興的なスピーキングの指導」であったり「序論と結論の表現の変化」といった、今まで指導したくてもピンとくる指導が浮かばなかったもどかしい部分への突破口として、参考になる本だと感じました。


本書では、場面別で100通りのパタンプラクティスが用意されています。自身の表現を広げるためにも、熟読したいと思っています。



参考文献

ダイヤモンド社 中山裕木子著 「英語は3語で伝わります ーどんどん話せる練習英文100ー」

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