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2021年4月4日日曜日

自由即興会話の活動をより活発にするためには?

      

学習指導要領の改訂のを受け、従来の4技能に「やりとり」という領域が加わりました。


コミュニケーションにおける、一方的な「モノローグ(発表形式)」では特定の目的に対しての産出活動になるため、その目的に対する効果的なアプローチをもとに、方法論的な「型」というレールを走らせるような活動を考案しやすいように感じます。例えば、「プレゼンを作成する」という産出活動には「相手を納得させ、特定の行動を促す」という目的が付随するので、この目的に応じて、先人たちの効率の良い“パターン”に従い、教育現場で段階的に指導・練習させることが比較的容易です。(プレゼンの作成については、以前わたしなりにまとめています。ご参照ください。「プレゼン資料作成の指導3ステップhttp://kichikawaginjiro.blogspot.com/2021/01/blog-post_31.html )


一方で、双方向で行われる「ダイアローグ(対話形式)」では、単に一括にし「『やりとり』を指導する」というのが困難なように感じます。この原因は、もちろん複数の要因を仮説として上げることは可能ですが、その1つに「『やりとり』と一括にしても、そこには明確な目的の存在する場合と、存在しない場合が混在している」ことが挙げられるようです。


今回は、広島大学附属中・高等学校中等教育研究紀要〈第 67 号 2020〉に収録されている久松(2020)中学校2年生が自由即興対話に英語で挑戦してみた : そこで起こっていること(A Challenge to Improvised Conversation in English by 2nd Grade Junior-High School Students: A Quantitative and Qualitative Analysis of the Conversation)」を私なりに掻い摘み、即興による会話をより活性化するために踏むべき工夫を考えてみます。




明確な目的のある「やりとり」


「やりとり」は2つに体分することができ、その1つが「明確な目的のあるやりとり」です。具体的には「交渉・道案内」等が該当します。このやりとりには、踏まえるべき手順をパターン化することができるため、短期的な指導・習得が期待されます。


このような「明確の目的のあるやりとり」の型を増やしていくことで、使用できる表現の型のバリエーションを増やし、転用していくことで、幅広い英語表現の習得が見込まれます。また、ある習得させたい表現や文法事項について、機械的な反復練習ではなく、明確な言語使用の場面設定により実際の運用に近い環境を作るためのロールプレイとしての要素、という側面もあるので、一概に「道案内」とか「自己紹介」といった、極めて限定的な場面での言語使用の練習は一切無駄であると、断言するのは早計なのかもしれません。


ただ一方で、「実際の現実社会において、こんなピンポイントな使用状況に直面することあるのか?」と違和感を覚えることも事実です。その原因として考えられるのが、次に紹介する「明確な目的のないやりとり」の存在なのではないでしょうか。


明確な目的のない「やりとり」


現実世界の言語のやり取り全てに目的が存在するわけではありませんよね。「やりとり」を2つに大きく分けたときの2つ目は「明確な目的のないやりとり」です。友人との日常的な会話や沈黙を埋めるためのやりとりはこちらに該当します。


「明確な目的がない」ということは、やりとりに達成目標がありませんし、よって付随的に評価指標も設定しづらくなります。また、達成度や評価指標もないので、具体的な指導のポイントも見えづらいように感じます。


一方で、人間の言語のやり取りは、全てが「明確な目的があるやりとり」ではありません。一見意味のない会話であったり、取るに足らない会話の果てに相互理解があり、人間らしい関係性が生じます。世間一般で言われる「コミュニケーション能力」は、皮肉にも指導しにくい、こちら側の「明確な目的のないやりとり」なのではないでしょうか。


では、この「明確な目的のないやりとり」を指導する際に着目すべきポイントはどこなのでしょうか?



中学生が「やりとり」に困る要因は「話題」


久松(2020)では、自由即興会話によるスピーキングテストで発生したコミュニケーションの不和を分析し、その場面を分類しました。中でも、最も頻繁に発生したコミュニケーションブレイクダウンは「次の話題が思いつかない」という項目でした。この結果は、英語の熟達度に関わらず、上位層・中間層・下位層にも共通したものでした。



「話題」を展開するテクニック


以前の記事で、桐生稔著『いまさら聞けない 雑談の一流、二流、三流』をまとめましたが、「会話力」=「相手に会話させる力」と捉えると、対話的な「やりとり」の指導の取っ掛かりが見つかりそうです。


詳細については、以前の記事("コミュ力"向上トレーニング)を参照していただきたいのですが、自由即興会話の活動を行う際には、以下の項目を導入指導してもよいのではないのでしょうか。


①「気づき」を言葉にし、相手に問う

②「共通部」と「差異」に着目する


さらに今回の結果を踏まえると、


③奥の手「話題の転換の表現」


を指導しても良いかもしれません。割と放任的に行ってしまいがちな「自由即興会話」の活動ですが、「流暢なやりとり」を育成しようと考えると、上記のような観点を指導することが有効なのかもしれません。



まとめと本音


コミュニケーションは「双方のやり取り」であり、一方の能力だけを評価・説明するのは困難です。その結果、評価しづらく、付随的に指導もしづらい活動は、あまり気が進まない領域なのかもしれません。

その一方、“人間らしいコミュニケーション”は「明確な目的をもたないやりとり」を基盤としているような気がします。英語という言語に限らず、最終的には母語の領域においても活用できるようなスキルが還元されることで、汎用的な対人能力の育成が期待できることから、教育的な意義は非常に高いと考えます。

ただ、「コミュニケーションの成功/不和」については、非常に主観的な評価付を下さないといけない領域であり、実際の「指導→評価」のプロセスについては、ある程度妥協して行わなければいけないのかもしれません。従来とは違うアプローチでの観察が必要なのかなぁと感じました。


何か知恵があれば、教えていただきたいですね、、、



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