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2021年6月6日日曜日

『がんばらない戦略』 継続的な学習の環境づくりの工夫

 今回の記事では、『がんばらない戦略 99%のムダな努力を捨てて、大切な1%に集中する方法』を基に、生徒も含め、私たちが「努力」を「努力」と感じず、当たり前のように継続できるための工夫を再考してみます。





「頑張ってはいけない」


私の好きな漫画に「シャーマンキング」という作品があるのですが、その主人公のモットーは「ラクをする(無理しない)」。無理をした形は脆い、というのが終始強調されている作品でした。


時に人間は頑張らないといけないとは思うのですが、それらは基本的に継続しません。システム的に欠損があるためです。その欠損を精神で底上げして実行することは出来ますが、継続させようとすると、安定したコンディションと結果が求められ、バランスを崩せばすぐに崩壊してしまいます。


本書では、初めから「頑張らない」をテーマにしているのですが、「グウタラのダメ人間になってしまおう!」というテーマではなく、「システム的な折損を、精神論で支えるのではなく、継続可能な工夫を加えて、整った環境を作り出そう」という趣旨だと感じました。


以下では、本書より3つのテーマをピックアップし、教育実践に当てはめた場合をご紹介します。





①「取り組む時間の固定」


本書では「火曜日の淑女」というエピソードが紹介されていました。ザックリ概要を紹介します。


毎週火曜日に清掃活動を行う淑女。彼女は活動を火曜日に固定することで、取組が継続している。


我々が何かに取り組む際、最も労力を使うのは「取り掛かるきっかけ」です。一方で、取組をスケジュールのルーティーンに組み込み、基本的な生活のサイクルに取り入れることで継続を可能にする、という工夫です。


実際、私は毎週このブログをまとめていますが、「日曜日の鉄腕ダッシュを見終わったら、PCに向かい合いブログを書く」というのをルールにしています(今週は2時間SPだったので、スタートが1時間後ろにズレ込んでいますが)。スケジュールに固定していることにより、取り掛かる際に、余計な心理的な負担を軽減できているように感じます。また、ルーティーンとなっているため、普段から「今週は何を書こうか」と日々ネタを探しながら生活を過ごせるようになりました。自分の中でリズムを整えることは非常に重要だと感じます。


では、教育実践ではどのように活かせばよいのでしょうか。

一番シンプルなのは、「家庭学習を曜日で固定化すること」です。可能であれば、時間まで固定してしまってもいいかもしれません。実際、週末課題等も年度が中旬まで進むと、提出を忘れる生徒が固定化され、大半の生徒が文句一つ言わず、当たり前のように提出するようになります。よって、課題を出す際に意識したいのは、突発的な課題を避け、継続的なデザインを心がけることです。提出が安定しない生徒に対しては、一緒にスケジュールを立て、日々の過ごし方を固定化することが重要なのかもしれません。(可能であれば、ZoomやMeetをつなげて、クラスの勉強会の時間を計画できると面白いかもしれませんね。)




②「自分ルールで達成感を感じる」


本書では「営業活動を行う男」というエピソードが紹介されていました。ザックリ概要を紹介します。


いくら断られても笑顔で営業活動を続ける男性。彼は「100回断られたら、寿司を食べる」というルールを設定することで、取組が継続している。


我々が努力をやめてしまう理由の一つに、「達成感を感じられない」という事例があります。一方で、自身で「量」「時間」といった「成果」とは別の部分に着目することで、達成感を感じる工夫を設定するのは、有用な方法なのかもしれません。


マラソンを走る際に、「あの電信柱までこのペースで頑張ろう!」と決め、そこまで行けば新たに「あの橋まではこのペースを維持しよう」など、自身の中でのルールを設定することで、小さな達成感を作り上げ、努力が継続することがありますよね。長期的な「成果」は、中間地点で感じ取ることが困難な場合もありますので、常に自分でスモールステップとなる目標を設定し、時にご褒美を設定するなどの工夫が必要になります。

実際に、私は勤務校で「自主課題」を課しているのですが、生徒がその自主課題を15回取り組むごとに「殿堂入り」と称して、その生徒のリクエストしたイラスト+イニシャルを掲示しています。イメージとしては、学生時代によく通っていたつけ麺屋さんの「激辛〇〇倍完食!」の張り紙なのですが、生徒は面白がって、難しい課題をコツコツ取り組むようになりました。実際の成績については、あまり直接的な影響を感じられていないのが本音なのですが、逆に言えば「成果が見えていないにもかかわらず、ある程度量をこなす習慣が身についてきている」ので、ある程度「量」「時間」に対して評価を与えるような場を設定するのは必要なのかもしれません。


では、教育実践ではどのように活かせばよいのでしょうか。

実際、多くの教育活動で実践されている「学習時間調査」というのもこれに該当するのかもしれません。学習の取組の成果は「成績」で判断されるべき部分を、「学習時間」で記録することで、継続を可能にしています。(少なからず、取組の可視化により、多少なりとも実感が生じるはずです。)改めて、このような記録の際には、目標を設定する段階で、自分自身に簡単なご褒美ルーティーンも設定してみると良いのかもしれません。その際、「成果」ではなく、継続することで達成可能な指標である「時間」「回数」「量」をものさしとして活用するように指示すると良いのかもしれませんね。



③「手順の簡素化」


本書では「腕立て伏せをする男」というエピソードが紹介されていました。ザックリ概要を紹介します。


きれいな女性とすれ違うたびに腕立て伏せをする男。彼はモテるために「スポーツジムに通う(会員登録→着替えの準備→移動→着替え→運動→シャワー→帰宅)」という手順を省き、簡素化した「その場で即腕立て伏せ」をすることで取組が継続している。


我々が何かに取り組む際、「実行」の段階までいけば継続できるのですが、最も労力を使うのは「取り掛かるまで」です。そこで、取組の手続きを最大限簡易化ことで継続を可能にする、という工夫です。


実際、単語テストに対して勉強してくれない生徒に悩んでいた時期がありました。生徒に聞くと、「試験範囲をわからない(正確には確認するのが面倒だ)から」という理由が発覚しました。そこで、単語テストのスケジュールを小さく印刷し、単語帳に挟めるサイズにしたところ、生徒は勉強するために単語帳を取り出し、その中に収納されているスケジュールを確認し、そのまま学習するようになりました。授業前の休憩時間に全く勉強していなかった生徒たちが、ある程度学習を始めたときには割と驚きました。


では、教育実践ではどのように活かせばよいのでしょうか。

ザックリ言えば、「勉強の手続きが減る工夫をしてあげること」です。例えば、上記のように「スケジュールを確認する」という手間を省くために、スケジュールは教材とセットで管理できるようなデザインにする(書き込んだり挟み込めるようにする)。また、参照してほしい参考書のページは記載しておく(最近気づいたのですが、しばしば無神経に「参考書で確認しなさいね」と指示をしていたのですが、よく考えればどの辺りを調べればよいのかわからない生徒が多いようです。ある程度の知識や専門用語の導入がないと、(少なくとも私の勤務校の)生徒は自身で調べてまとめる経験が乏しく実行に移せないようです)。兎にも角にも、内容以上に、課題の丁寧なデザインを意識することが「継続」のための秘訣のようです




まとめと本音


最近、自分の授業実践に対して限界を感じています。というのも、「授業内」の効率化に対してはある程度極まってきており、根本的なデザインを変えない限り劇的な変化が望めないような気がしています

Googleは「結果を10倍にする方法を考える」というのをモットーにしているそうですが、10倍を生み出そうとすると、多少の努力ではどうしようもなく、根本的なシステムの変更が求められます。「んなもの、あるわけないじゃないか」と言われればそこまでなのですが、やってみないとわからないじゃない?と思い、2割UPではなく、絶えず1000%増を意識して取り組んでいます。

そんな中、「とりあえず、授業中の変化には限界を迎えているので、ひとまず授業外の時間を活用したい!」と考えた結果、コストパフォーマンスの良い「個人学習のデザイン」を模索している最中です。今回の内容は、ある種、その一環ですよね。自分は管理するだけで、生徒が自主的にパワーアップしてくれるシステムが構築できればなぁ、なんて桃源郷を描いている今日このごろなのでした。



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